魚崎郷の酒蔵めぐり|櫻正宗・浜福鶴を歩く半日モデルコース

旅酒手帖

灘五郷は、神戸市から西宮市にかけて酒蔵が集まる、日本を代表する酒どころです。

その中でも魚崎郷は、駅から歩いて酒蔵を巡りやすい地域です。

今回は、櫻正宗記念館「櫻宴」と浜福鶴吟醸工房を歩いてきました。酒蔵見学や試飲を半日で楽しめるモデルコースとして紹介します


魚崎郷の酒蔵めぐりは半日で楽しめる

魚崎郷は、阪神魚崎駅から歩いて酒蔵を巡りやすい地域です。

今回のコースは約半日で回ることができ、見学や試飲をゆっくり楽しんでも無理のない距離でした。

今回歩いた魚崎郷の酒蔵めぐりコース

スタート地点は、阪神電車の魚崎駅です。

阪神電車の魚崎駅の駅舎の魚崎の看板
魚崎駅から櫻正宗記念館「櫻宴」と浜福鶴吟醸工房を歩くルート地図

大阪梅田駅からは直通特急で約30分、神戸三宮駅からは約10分が目安です。乗り換えなしでアクセスできるため、大阪方面からも神戸の中心部からも訪れやすい場所です。

時刻表や駅構内の情報は、阪神電車公式ページをご確認ください。

今回歩いた順路はこちらです。

阪神魚崎駅

南側の出口から出て、そのまま海の方向へ歩きます。国道43号線の下を通るトンネルをくぐると、右手にゴルフ練習場と「櫻宴」の看板が見えてきます。

🚶 徒歩約5分

櫻正宗記念館「櫻宴」

櫻宴を出たら南へ進み、最初の信号を左へ曲がります。そのまま東へ歩くと、浜福鶴吟醸工房に到着します。

🚶 徒歩約5~7分

浜福鶴吟醸工房

二蔵の間は近く、道もそれほど複雑ではありません。ただし、地図は道順を簡略化しているため、現地ではGoogleマップなども併用してください。


櫻正宗記念館「櫻宴」を見学

最初に訪れたのは、櫻正宗記念館「櫻宴」です。

入口に到着すると、瓦屋根の美しい建物と、手前に広がる庭が目に入ります。テラス席には提灯が下がっていて、「櫻宴」という名前に似合う華やかさがありました。

館内には、酒造りの歴史を紹介する展示や売店、レストランがあり、見学と食事を一緒に楽しめます。旅の途中に立ち寄る場所としても利用しやすい施設でした。

営業時間や休館日、イベントなどの最新情報は、櫻正宗記念館「櫻宴」公式サイトでご確認ください。

櫻正宗記念館「櫻宴」の瓦屋根の建物と杉玉が吊るされている

建物に入ると、右手に喫茶スペース、左手にショップがあります。

まずはショップで、どのような商品が並んでいるのか見て回りました。

印象に残ったのは、ポン酢と山田錦のせんべいです。日本酒だけでなく、漬物やお菓子なども並んでおり、お酒を飲まない人でもお土産を選べます。

無料試飲の「涼風しぼりたて」

ショップを見ていると、レジの方が「無料試飲はいかがですか」と声をかけてくださいました。

酒樽に氷を敷き詰め、その中で冷やされていたのは、夏らしい青いボトルの「涼風しぼりたて」。純米生貯蔵酒です。

無料試飲用 氷で冷やされた涼風しぼりたてのブルーの瓶

日本酒初心者の私にもちょうどよい量を、カップに注いでくださいました。

よく冷えたお酒は、喉に引っかからず、すっと入っていきます。日本酒らしい香りが強く残ることもなく、後口も軽やかでした。

暑い夏の午前中に飲む一杯として、ぴったりです。

日本酒はまだ苦手だと思っていた私が、最初の一杯から素直に「おいしい」と感じました。

歴代の酒瓶から時代の変化を見る

その後、館内の展示スペースを見学しました。

昔の酒造りに使われていた道具や、櫻正宗の歴代の酒瓶が並んでいます。

櫻正宗歴代のボトルの展示品

酒瓶やラベルを見ていると、その時代のデザインや暮らしまで想像できるようで、わくわくします。

外から建物を眺めているだけでは分からなかった、櫻正宗が積み重ねてきた時間を感じられる展示でした。

館内には、酒蔵ダイニング「櫻宴」と、呑処「三杯屋」もあります。

三杯屋には、飲んだ酒質ごとにスタンプを集める仕組みがあるそうです。全25種類を集めると章ごとに称号が上がり、最終章の「正宗」に到達すると、きき酒検定を受けられるとのこと。

検定に合格すると、「櫻正宗酒博士」の称号と酒器が贈られるそうです。

今回は利用しませんでしたが、次に訪れる理由が一つ増えました。

女性ひとりでも見学しやすかった

見学中、年配の女性を二人見かけました。

お二人は別々に訪れていて、私を含めると、その場にいた女性三人が全員ひとりでした。

酒蔵見学というと、お酒に詳しい人やグループで訪れる場所という印象を持っていました。しかし、実際の館内は落ち着いており、ひとりでも自分のペースで展示や買い物を楽しめます。

櫻宴は、日本酒初心者の女性がひとりで訪れても、気負わず過ごせる場所でした。


浜福鶴吟醸工房を見学

二蔵目は、浜福鶴吟醸工房です。

外観は、昔ながらの酒蔵というより、気軽に立ち寄れる酒屋や工房のように見えました。

神戸・魚崎郷にある浜福鶴吟醸工房の外観

中へ入ると、まず大きな酒樽が目に入ります。

酒樽の正面をくり抜いたような入口の奥に階段があり、そこから2階の展示スペースへ上がります。

見学時間や休館日、きき酒処の利用については、浜福鶴吟醸工房公式サイトでご確認ください。

山田錦や雄町など、酒米の展示を見る

2階へ上がって最初に目を引いたのは、酒米の稲穂を品種別に並べた展示でした。

山田錦や雄町など、最近になって少しずつ聞き覚えが出てきた名前が並んでいます。

浜福鶴吟醸工房に展示されている酒米資料の稲の藁

ワインでいえば、ブドウ品種を見るようなものでしょうか。

以前の私なら、そのまま通り過ぎていたと思います。けれど、知っている名前を見つけるだけで、酒蔵見学が少し楽しくなりました。

順路を進むと、窓越しに大きなタンクなど、現在の酒造設備も見学できます。

昔の道具だけではなく、今どのような設備でお酒が造られているのかも見られる点が、浜福鶴吟醸工房の面白さです。

名物案内人の無料試飲にストップをかける

見学を終えて1階へ下りると、試飲用のお酒が並んだ冷蔵カウンターの前に、法被姿の男性が立っていました。

近づくと、こちらが何かを尋ねる前に、小さなカップへお酒を注いで渡してくださいました。

並んだお酒を左から順番に説明しながら、次々と試飲を勧めてくださいます。

三種類ほどいただいたところで、私は「あ、もう大丈夫です」と自分からストップをかけました。

これ以上ここで飲んでしまうと、このあとの予定に差し支えそうだったからです。

訪問したときには知りませんでしたが、この方は浜福鶴の名物案内人として親しまれている、宮脇米治(よねじ)さんでした。

後日調べてみると、17歳の頃から酒造りに携わり、その道は約70年。米寿を記念して、宮脇さんの名前を冠した日本酒も造られていました。

その場で知っていれば、酒造りのことや、長年の経験についてもっと聞いてみたかったと思います。

旅先では、その場を離れてから知ることがあります。そして、知ったあとで聞きたかったことが増えていきます。

※宮脇米治さんが常時いらっしゃるとは限りません。

浜福鶴吟醸工房にある宮脇米治さんの紹介展示

柚子酒とあらごし桃を試飲

日本酒の無料試飲にはストップをかけましたが、気になっていた果実酒は別です。

後から入ってきた男性グループが試飲をしている横から、声をかけました。

「柚子酒も試飲できますか」

柚子酒は、柑橘の爽やかな香りと、少しとろみのある口当たりで、とても飲みやすいお酒でした。

さらに、「今の時期は、あらごし桃酒もあるで」と勧めていただきます。

あらごし桃は、白桃を思わせる自然な甘さがあります。ただ甘いだけではなく、お酒らしいほのかな苦みも残りました。

日本酒の試飲は止めたのに、果実酒は飲む。

私の舌は、正直です。

有料試飲で「Lupin」を選ぶ

無料試飲のあとは、有料試飲にも挑戦しました。

ガラスケースの中で目に留まったのが、「Lupin」という純米酒です。

ラベルに書かれていたのは、「白ワインのような純米酒」。ワイン酵母仕込みで、アルコール度数は11度です。

瓶の首には、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード最高金賞受賞酒」と書かれた札がかかっていました。

ワイン好きとしては、これは飲むしかありません。

日本酒が苦手な私のためのお酒が、ついに現れた。そんな期待を抱いて、レジへ向かいました。

有料試飲は、レジで専用のQRコードを購入する方式です。QRコードを機械に読み込ませ、お猪口を指定された場所へ置くと、自動でお酒が注がれます。

ちょっとした自動販売機のようで、これも楽しい仕組みでした。

浜福鶴吟醸工房で試飲した日本酒「Lupin」

ところが、先ほどの無料試飲とは違い、お猪口には思っていた以上の量が注がれていきます。

「ああ、そんなに注がないで」

そう思っても、相手は機械なので止まりません。

一口飲んでみます。

「え、甘い」

白ワインという言葉から、私は酸味のある辛口を想像していました。しかし、Lupinは甘みがはっきりしています。

甘口のワインがあまり得意ではない私には、少し甘さが強く感じられました。

私は、半分ほど残しました。

もちろん、Lupinが悪いわけではありません。「白ワインのような純米酒」という言葉から、私が勝手に辛口を想像してしまったのです。

甘みのある白ワインや、やわらかな口当たりのお酒が好きな方なら、違う印象になると思います。


魚崎郷の酒蔵めぐりに必要な時間

今回歩いた二蔵の所要時間は、次のとおりです。

  • 見学と無料試飲だけなら、一蔵30分前後
  • 買い物や有料試飲を含めるなら、一蔵45分ほど
  • 二蔵と徒歩移動を合わせて、2〜3時間が目安
  • ランチをゆっくり楽しむ場合は、3〜4時間ほど

私は展示や売店を見ながら、一蔵30分ほど滞在しました。

すべての展示をじっくり読みたい方や、レストランを利用する方は、余裕を持った予定を組むのがおすすめです。


初めて魚崎郷を歩くときの注意点

実際に歩いて感じた注意点をまとめます。

  • 試飲をする場合は、電車や公共交通機関で訪れる
  • 夏は帽子、飲み物、日傘などを用意する
  • 空腹のまま試飲を重ねない
  • 複数の酒蔵を回る場合は、一杯ずつの量を抑える
  • 瓶を購入する場合は、持ち歩く重さも考える
  • 営業日や試飲内容は、訪問前に公式サイトで確認する

特に大切なのは、最初の酒蔵で飲みすぎないことです。

無料試飲でも、何蔵か重なると少なくない量になります。すべて飲み切ることよりも、最後まで無理なく楽しむことを優先してください。


魚崎郷の酒蔵めぐりは日本酒初心者にもおすすめ

魚崎郷を歩いてみて、日本酒初心者にも回りやすい場所だと感じました。

駅から徒歩で移動でき、酒造りの展示を見たあと、少量から試飲できます。ひとりでも入りやすく、分からないことを教えてくれる人との出会いもありました。

そして、この日いちばん素直においしいと思ったのは、最初に櫻正宗で飲んだ「涼風しぼりたて」です。

「白ワインのような日本酒なら、きっと飲める」

そう思って選んだLupinは、私の想像とは違いました。

ワインの入口から日本酒へ入ろうとして、入口で転んだ。そんな結果です。

けれど、遠回りをしたからこそ分かったことがあります。

ワインに似た日本酒を探すより、まずは日本酒を日本酒として一口飲んでみる。その方が、自分に合う一杯へ近づけるのかもしれません。

魚崎郷の二蔵は、その最初の一口を探しやすい場所でした。

コメント